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フッ・・・

第九十八話

憑かれた友達

語り手:ビビリ ◆T0iOfn.P8.

326 :ビビリ ◆T0iOfn.P8. :2006/08/12(土) 06:41:33 ID:GaXTFMEh0
『憑かれた友達』(1/3)

大学時代実際自分にあった話

ある日友人が「この間、彼女と夜の○○公園の滝のところで幽霊見てマジでビビッて逃げたよ」って話をしてきた。
その時、俺はあまり信用していなくて「マジで、コエー」とかノリだけで話をしていた。
そして数日後、友人が「やばい。こないだの幽霊にマジで憑かれた」って真っ青な顔して相談してきた。
友人が言うには「家の前に夜になると現れて、部屋を通り抜けたり、壁から顔だけを出してジーと見てきたりする」との事だった。
こういう話は大抵恐怖から大げさに言ってくるものなのだが友人が真剣なのもあってしばらく俺の部屋や他の友人の部屋に泊まることになった。
(その時友人はアパートで一人暮らし、俺は下宿暮らしで下宿には共通の友人も多数いたので部屋を転々と移動していた。
友人の彼女もなんか怖い事になってるらしく一緒に俺の下宿に来た)

そんな状態で数日たち、友人も落ち着いてきて「教科書とか取りに行きたいし、風呂にも入りたいからアパートに一緒に行ってくれないか」と持ちかけてきた。(下宿はシャワーしかなく風呂がなかったので)
俺は特に怖い目にあったわけでもないので軽い気持ちで「いいよ」と承諾し、二人でそろって原付にのって友人のアパートへと行ったのだが、正直行かなければよかったと後悔した。

友人のアパートに着き、友人が準備をしながら「風呂にも入るからちょっと時間かかりそうなんでテレビでも見てて」というので手袋を脱ぎヘルメットの中に放り込んでテレビをつけて見ていた。
ある程度準備を終えた友人が「それじゃぁ風呂に入るけど、待っててね。絶対、待っててね」と怯えながら言うので「大丈夫だって、置いて帰るようなことしないから」といって風呂に入らせた。

327 :ビビリ ◆T0iOfn.P8. :2006/08/12(土) 06:42:58 ID:GaXTFMEh0
『憑かれた友達』(2/3)

友人の風呂を待っている間、ボーっとテレビを見ていたのだが、後ろからいきなり

「はい、これ・・・・」

と声を掛けられて俺の手袋を手渡してきた。
俺は、『友達は風呂から上がってきたんだな』と思い手袋を受け取って
「テレビがちょうどいいところだから終わるまで待って」
と言ったが答えは無かった。テレビに集中していたのでその時はまったく気になっていなかったのだが、そのすぐ後に

「あー、いい風呂だった」

と友人が風呂から出てきて、その時になって俺は手渡された手袋を見ておかしいことに気がついた。

ワンルームのアパートなので風呂は俺がテレビを見ている部屋と扉一枚隔てただけの場所にあり、扉が開けばすぐにわかる状態だったのだ。

さすがに怖くなってきた俺は
「お前さっき出てきて手袋手渡してくれたよな?」
と確認したのだが

「いや、今出てきたばっかりだし、手袋渡す必要ないじゃん」
と友人は言い、それで気づいたのか慌てて服を着始めた。

その時俺の視界の隅でなにか白いものが動いた気がした。
慌ててそちらを向いたが何も無い・・・と思ったのだが、向いた方向にある壁に掛けてあったカレンダーが風もないのにゆらゆらと揺れていたのだ。
カレンダーの方に行こうとした時、友人がいきなり

「うわああああぁぁぁあぁ」
と叫んで駆け寄ってきて

「今そこの床から奴が出てきて天井に抜けていったああああああ」

その声に友人の方を向いた時、友人の後ろにある擦りガラスの窓に不自然な光が揺れているのが見えた。
俺は友人に「あの窓の向こうって車の光とか入ってくるんだっけ?」と聞くと
「そっちは隣のアパートがあるだけだよ」と言うことだった。
友人と怯えながらその光を見ていたが一向に消える気配はない。

328 :ビビリ ◆T0iOfn.P8. :2006/08/12(土) 06:43:34 ID:GaXTFMEh0
『憑かれた友達』(3/3)

友人が思い切って擦りガラスを開ける

「うわあああぁぁぁぁ、やっぱりいるうううぅぅぅぅぅぅ」

と窓の外を凝視している。俺も窓の外を見たのだがどこにいるのかわからない。それにさっきまで見えていた光はどこにも見当たらない。

「え?どこ?」と聞くと
「向かいのアパートの二階あたり、真正面からちょい左」
友人の言う方向を見ると・・・・なんかそこらへんだけがおかしい
その辺の空間だけなんか歪んでいるというか、湯気を通して見たような感覚というか。

たしかに、そこには何かがあるのだけは分かり怖くなった俺は友人と一緒にすぐ部屋を出て原付のエンジンをかける。
だが、いくらキーをまわしてもどちらの原付もエンジンがかからない。
キックでエンジンをかけようとするがうんともすんとも言わない。
友人の原付はそれでもなんとかキックでエンジンがかかったのだが、俺のほうは一向にかからない。
俺は押しがけでエンジンをかけようと原付を押して走った。どれぐらい走ったのかわからないしその時は回りなんてまったく目もくれずエンジンをかけることだけに必死だった。
押しがけでなんとかエンジンがかかり、フルスロットルで下宿へ向かう。

その時、ふとバックミラーに目をやると、手足をだらーんとたらした白いワンピースを着たぼさぼさの長い髪の女が手も足も動かさずに滑るようについてきているのが見えた。
あきらかに足は地面についていない。
こちらは無改造とはいえ60km/hで走れる原付。
どう考えても後ろのものは人間じゃない・・・・
そこからは、もう怖くて後ろを見ることができずただ必死に下宿まで突っ走った。

下宿に帰り塩を自分達にかけ、事情を知る友人達で集まって怯えながらその夜はその後何も無く無事に過ぎた。

後日談なのだが、友人がその幽霊に憑かれた場所で以前、男に振られて首を吊って自殺した女性がいるという噂を聞いた。
友人は寺に行きお払いをしてもらい、その後おかしなことはなくなった。

注)俺の原付はそれまでエンジントラブルなどまったくなく、その後もおかしくなることは無かった。
注2)窓のくだりの部分で、擦りガラスの窓を開けたのに窓の向こうと言っているのは、北海道なので二重窓だからです。

【完】


フッ・・・