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第四十五話
バス停のおじさん
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語り手:クリやん ◆aHHsHtXLnA
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166 :クリやん ◆aHHsHtXLnA :2006/08/12(土) 01:28:52 ID:+b2E+JKw0
第45話 “バス停のおじさん”
子供の頃は霊が見えやすいというのは、本当だと思う。
『あれは霊だったのでは?』と思ったものを初めて見たのは、小学校低学年の時だった。
その日自分は友人の家へ遊びに行くため、同行している姉の後ろを歩いていた。
その際にバス停の前を通ったのだが、子供心に『?』と思うものを見た。
バス停には数人立っていたのだが、その足元に、一人の“おじさん”が寝転んでいる。
すぐに『こころのびょうきのひとなのかなあ』と思った自分は、“おじさん”の顔を上から遠慮なく覗き込んだ。
バス待ちの人たちの足元、間をぬうように“おじさん”は寝転んでいて、目を開けたまま、瞬きひとつしない。
ひょっとして死んでいるのかと思ったが、周囲の人は気にもとめていなかった。
道草を食っている自分に姉が声をかけたので、その場を去った。
その時、横にいたおばさんにぶつかろうとしたのだが、おばさんは足元も見らすにヒョイと自分を避けた。
今、“おじさん”の体におばさんの足が当たったのでは…と思ったが、さほど気にしなかった。
暫くして、姉に“おじさん”の話をした。
自分を呼ぶ際にこちらを見ていた姉も、勿論その姿を見ていたはずだった。
しかし姉は、怪訝な顔をするばかり。そして話を一通り聞いたあとで言った。
「あたし、その人みてないよ。人なんて寝てなかったよ。」
霊というものが、あんなにもはっきりとした形だとは思っていなかった。
その土地から引っ越すまでの数年間、自分はそのバス停をちゃんと見ることができなかった。
【完】
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