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フッ・・・

第四十八話

語り手:大学生 ◆.KhUo9Crfk

300 :大学生 ◆.KhUo9Crfk :2006/07/23(日) 02:37:07 ID:GzTfg6DR0
48話 「頭」

私の通っている大学は、周囲が山に囲まれている。
盆地なためか風が通らず、梅雨とも重なっている今の季節はじめっとした不愉快な天候が続く。
そんな中、暑気払いならぬ梅雨払いという名目で、サークルのみんなと飲み会をした。
大学の構内には、高校で言う部室棟のようなものがあり、
きちんと活動をしている各サークルに割り当てられる。
6畳程度の狭い部屋だが、酔ってしまえばそんなことは気にならない。

深夜になり、のんびりとした雰囲気が漂ってきたころ。後輩の一人が呟いた。
「この前の地域学のときの先生に聞いたんですけどね。このあたりってやばいらしいですよ」
このあたりはやばい、なんとどこの学校にもある話だと思いながら、私は黙って話を聞いた。
「都で飢饉が起ったときなんか、たくさんの孤児が寺に食料を求めにやってきたそうです。
けど寺もそんな余裕はないから、コネがある孤児しか受け付けなかった。
拒否された孤児は、食料を求めて山に入って行ったそうです。
そして、多くの子供が山で、道で、死んでいったそうですよ。
……この学校のあたりでも、何人かの人がなくなったんでしょうねえ」
妙にしんみりしてしまい、飲みなおすという気持ちにはなれなかった。

(続く)

301 :大学生 ◆.KhUo9Crfk :2006/07/23(日) 02:37:50 ID:GzTfg6DR0
他のメンバーも潰れているし、私らも寝ようかと言うと、後輩もうなずいた。
電気を消し、部屋に置いてあるタオルケットをかける。

そのとき、ドアの横の小窓に、丸いものが浮かんでいた。
外の街頭の逆光と、コンタクトを外した私の目では輪郭しかわからなかったのだ。
ところが、その丸いものが何なのか、少しずつ脳が理解しはじめてきた。
目で見るのではなく、脳で見るという感覚。
人間というより、むしろ猿のような、ぎょろりとした目、半開きの唇。部屋の中を見回している。
後輩に声をかけることも出来ず、私は急いで目を瞑ってタオルケットをかぶった。

あの頭は、子供の霊だったのだろうか?
怖い話をしたから拠ってきてしまったのだろうか。
しかし、普段見ている子供の顔と違いすぎて、未だ実感がわかない……

おわり

【完】


フッ・・・